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「オールド・ボーイ」(2013)の感想

オールド・ボーイ」(2013)の感想

スパイク・リー監督。韓国映画版は視聴済み。

韓国版は衝撃的な展開にそうとう恐怖した覚えがある。監禁ビジネスとか非現実的だし、話も荒唐無稽なんだけど、怨念の深さが凄いというか、人を追い込むいやらしさに妙なリアリティがあって、よくこんな話を考えるなあ、とただただ驚いたようにも記憶している。

スパイク・リー版は韓国版とストーリーはほぼ同じ。ただ残酷表現などはマイルドになっているように思う。意外と上映時間が短く、主人公とヒロインが男女関係になるあたりなどは、韓国版と比べるとやや性急に見える部分もあったように思えた。

一番の違いは主役の人選かな。韓国版の主役と比べると今作のジョシュ・ブローリンは年を取り過ぎているような感じ。ビルドアップの変わりようは素晴らしいのだが、枯れた感じのほうが先に立ち、韓国版のような開放されて爆発寸前のエネルギーみたいなものは感じられなかった。

そもそも監禁中の主人公の性格の変化みたいなものがあんまりうまく描かれてないような。監禁前のキャラクターがちょっとゲスすぎて、感情移入がしにくいところはあるように思う。
恨みを買う性格であることはミステリーの導入として必要だったのかもしれないが、もうすこし善良な人であったほうが後の変化が大きくなって良かったのではなかろうか。

韓国版で面白かった横スクロールアクションパートだけど、こっちは正直ダメな感じ・・・ 一応は見れる出来だけど、迫力が足りないし、ジョシュ・ブローリンの動きもなんか鈍い。敵の動きも良くなかったように思う。まあでもこの映画的にはここはサービスシーンみたいなものなので、あんまり頑張りすぎなくてもいいのかもしれない。
そのぶん(?)サミュエル・L・ジャクソンを拷問しているシーンは面白かった。ただちょっと普通はあんなに耐えられないよな。サミュエル・L・ジャクソンが痛いのを喜んでるような感じで騒いでいたので、あんまり残酷に見えないのが良かったのかもしれない。さすがサミュエル。

偽の○○を見せて騙すというのは韓国版でもやっていたかな。多分今作のアイデアだと思うんだけど、ここはアメリカらしい良いアイデアだと思った。

肝心のアレだけど、今作は関係があっさりしすぎか。もっと深く離れられない関係になっていないとテーマ的に本当はダメなんだろうけど、わりとマイルドなままで終わってしまった。韓国版はグロテスクすぎるので、こういうマイルドな改変もやむを得ないかなあ。
韓国版にあった悲劇性は薄くなってしまったが、代わりのオチはうまいと思った。この映画でうまいと思わせてはいけないような気もするけど・・・


アメリカ版は韓国版を先に見て、比較して見ると面白いかもしれない。
先にこっちから見るとどうなんだろう、ただ荒唐無稽なだけのストーリーに見えてしまうんじゃないだろうか。
今作もオリジナルと比べて特に悪いわけではないと思うが、改変するならもっと大胆に改変して、アメリカらしい別な世界観のオールド・ボーイを見たかったような気もする。
スパイク・リー監督はアカデミー賞の黒人ノミネート問題で騒がれているけど、この作品も黒人キャストだったらもっと違った面白さが出たんじゃないのかな。サミュエル・L・ジャクソンが監禁されてファックを連発しながら20年間、というのを想像して一人で笑ってしまった・・・