私のかんそうき

感想記録ブログ

「海街diary」の感想

海街diary」(2015)の感想

食事シーンがまず多い。冒頭から朝食のシーンから列車で駅弁を食べるシーンに続いていき、この流れにはちょっと驚いた。
その後も何かあるごとに食事シーン。意図的であるにしても多すぎるような気はした。
おかげで映画全編のどかな幸福感はあるのだが、なんだかただの生活ぶりを見せられているだけにも感じてしまった。緊張感のある怖い食事シーンとかも見たかったような。(ちょっと気まずい食事シーンはあることはある)

映画は何かをあまり語らずに、エピソードを積み重ねる形でストーリーを見せていく。落ち着いた映像、奇を衒わない自然体の演出ながら退屈せずに見ることが出来、自分にはうまく評論できないけど非常にハイレベルな映画であるように思う。
ただ説明セリフとかは少ないので若干状況がわかりにくいところもあった。まあちゃんと見ていれば大丈夫かな。

役者陣は皆素晴らしかったのだが、特に目を引いたのは長女を演じた綾瀬はるか。自然な演技ながら存在感がすごくあり、正直こんなにすごい役者さんだとは思っていなかった。思わずファンになっちゃうぐらいのオーラがあったなあ。
彼女の作品は今までほとんど見たことは無かったので、おっぱいバレーも今度見てみようと思う。(最初に浮かんだ作品がこれ・・・)

次女役の長澤まさみも可愛くて色気があり良かったのだが、後半次女と一緒に登場する加瀬亮がまたすごかった。
自然すぎて最初誰だかわからなく、本職の銀行員だと思ったレベルの演技。こういう全く前に出ない演技というのも珍しいんじゃないだろうか。いいものを見たなあ。

逆に存在感ありすぎだったのは堤真一。声からして俳優然とした異様な存在感があり、演技じゃなく自然なものなんだろうけど、とても医者には思えない溢れ出る存在感だった。これはこれで面白いものを見た感じ。いろんなタイプの役者がいるのね。

広瀬すずは役がわりとおとなしい役だったので、そんなに驚くようなシーンは無かったように思う。後半別な意味で驚くシーンはあったけど・・・
作中の設定だと最初は中1なのかな。若干それより大人に見えたのはしょうがないか。

ストーリーで気になったのは四姉妹の父親の存在。冒頭の葬儀のシーンで姉妹たちがあまりにも父の死について他人事なので、正直最初はちょっと混乱した。
実の父親との距離を示しているんだろうけど、ここまで他人事だとかえって父親の人物像に興味が出てしまった。たた残念ながら作中では少ししか情報が出ないんだよね。親世代の過去の話はテーマとは違うので仕方ないけど、もう少し登場人物が父親の事を気にかけたり、存在感を出して欲しかったな。
すずですらあっさり父親のことを過去の人にしているように見えたのは自分だけかなあ。まあでもやっぱりそこがテーマじゃないんだよね。この映画は生きている人たちの物語なんだな。

見る前は広瀬すず中心のドラマかと思っていたのだが、そこまで彼女の比重は大きくなく、四姉妹を中心にして、海街に住む人々を俯瞰した視点のドラマといった感じ。登場人物それぞれにしっかりとドラマがありどのパートも面白い。
生命力溢れるすずのシーンがあり、死をイメージさせるシーンがあり、生と死が対比になっているようでここは興味深いところ。生命の円環が表現されているのかな。

まあとにかくこの映画は俳優陣の演技を見てるだけでも面白い。特に今まで何とも思ってなかった綾瀬はるか長澤まさみの評価は自分の中で一変した。
これは監督さんの手腕のおかげなのかな。いやあいい映画でした。